”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


グラスの触れ合う軽やかな音がして涼が現れた。

片手にピッチャー、もう片手にグラス二つを持ち、器用に二つに水を注ぐと綺樹へ差し出した。

二つとも手から取り上げると、涼がピッチャーをナイトテーブルに置くのを待って一つを返した。


「ありがとう」


礼を言われた綺樹は黙ったまま水に口をつけた。

ほんのりと柑橘系の味がして、意識がすっきりとしてきた。

涼は綺樹が水を飲む様を見下ろしたまま黙っていた。

どうしていいのかわからない。

それが伝わってきて、思わず笑ってしまった。