なぜだろう。
涼の通った鼻筋を見つめながらぼんやりと考える。
やがてゆっくりと涼の肩を少し持ち上げ、体の下から抜け出した。
そのままベットから降りようとすると腕を捕まれた。
振り返るとまだ眠りかけたまま、涼が上体を起こしていた。
乱れた黒い前髪の間から、まだ半分開かない瞼により、影が落ちた瞳で見上げて
いる。
この物憂げな表情に慰めたくなり、慰めた女の数はどのくらいだろう。
「どこに?」
声がかすれていて、切なげで、切羽詰っていた。
どうしてこの人はこんな時に限って、魅力を発揮するのか。
「水を」
涼は綺樹の腕を離すと起き上がった。

