* 限界だ、と思った。 そして、もう、うんざりだった。 代わりに違う女を抱いて、誤魔化し続けることに。 綺樹の首筋に顔を埋めて、あの香りを感じたかった。 それだけでいい。 優しく腕を回してくれれば、その先は望まない。 何日ぶりか分からない屋敷に涼は車を向けた。 出迎えた執事の藤原は、毎日繰り返されているかのように自然に迎えた。 上り慣れた階段を上がり、プライベート用のリビングに入る。