「ん?
 大したことではないよ」


成介は顔を引き締めて、しばらく黙していた。

なぜ綺樹が何も行動をしようとしないのか、やっとわかった。

行動をしないという作為の目的を。


「あなたは。
 相当前から策を練っていましたね」

「う~ん、どうかな」

「なるほど、なるほど。
 ならば、断固阻止しますよ」


成介が社長職に就きたくないことは、以前、涼から聞いている。

綺樹の目が輝き、口の両端が持ち上がっていた。