”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


綺樹にはフェリックスという男が今一わからなかった。

優しさなんて無い。

と思っていても、違う気がする。

壮絶に嫌われている。

そうじゃないような感じもある。

綺樹はフェリックスの横顔を見つめた。

甘さの無い顔。

きりりと引き締まり、鋭い眼差し。

フェンシングの練習をしているのを、一度見たことがあるが、もの凄く納得してその姿を眺めた。

時代が時代だったら、甲冑を着けて、白馬に乗っているだろう。

意外と、その城主でなくて、その奥方に忠誠を心の中で誓っていそうだ。

自分の妄想が過ぎるのに、綺樹は苦笑した。

思考を戻す。

これからウルゴイティの前途を考えたら、見極めなくてはいけない。

一体、この男はどういう男なのだろう。