「愛人のところに入り浸りなのがわかっていて。
夫が暗に何を示しているのかわかっていて。
なのに、こうして家で何も言わずにいるっていうのは、健気さをあからさまに装って、周りにアピールしているようで、鼻持ちならないよな」
綺樹は立てた膝に頬杖を突き、庭を眺めながら、淡々と語った。
「男のタイプによるんじゃないでしょうかね」
成介の言葉に綺樹はかすかに笑った。
「そうか。
あいつは意外と冷淡だからな。
だから」
言い淀んだ。
こっちに寄り付かないのかもしれない。
いや、西園寺に縛り付けている原因の私を、恨んでいるから、寄り付かないのかもしれない。

