成介が祖父の見舞いにきた時だった。
いつものようにリビングに続いている温室で、本を読んでいた綺樹の所に顔を出した。
当たり障りのない話をして、ふとした沈黙に綺樹は気付かぬ内に口にしていた。
「成介。
涼は私に結婚するという電話をくれていた。
なぜしなかったんだ?」
成介はまばたきした。
「聞いていないんですか?」
綺樹が苦い顔をする。
「聞くようなことじゃないだろ。
プライバシーの侵害だ。
私との政略結婚が出たせいか?」
「あなた。
もしかしてずっと罪悪感に駆られているんですか?」
成介がいたずらっぽくなった。

