「そのカーペットは国宝級だ。 嘔吐されると損失が大きい」 目の前にワインクーラーが現れた。 「今日はもう寝ろ」 ワインクーラーを抱え込み、胃の中を全部吐き出した綺樹の頭の上から言葉が落ちてくる。 皮肉で返す気力も無かった。 だがその日から少し食事の内容が変わった。 日本食まがいの物が出るようになり、味付けもさっぱりとしてきた。 コックを替えたのかと何かの折に聞くと、鼻先で笑われた。