「おやおや、わかっているのかと思いましたよ」 涼の表情が沈み込む。 「かといって、あなたの愛人が増えるのも、どうなんでしょうねえ」 あっけらかんとした口調だけに、鋭利な刃として突き刺さる。 「あなたはどういう展望をもって行動しているんです?」 わかっていて聞いてくるのが癪だ。 「まあ、いいですけどね。 そんなに離婚したいなら、止めませんよ」 成介は投げ出すように言って出て行った。 涼は書類を押しやると肘を突いて頭を支えた。 何よりも、それを一番避けたいのだ。