”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


西園寺夫人は決して暇ではない。

だから毎回3・4日では戻ってくる。

藤原に電話をかけ、待ちかねた帰宅を確認したら、反対に屋敷へは帰らなかった。

正しくは帰れない。

顔を合わせたら、問い詰め、なじり、押し倒す自信があった。

そして“夫婦関係”の崩壊だ。

それだけは嫌だ。


「何を考えているんだか」


何回目かの旅行中に涼はいまいましげに呟いた。

決裁印の押された書類を引き上げるため、いた成介が呟きを耳に止めた。