”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


病床の祖父が気になっていた。

枕元に座り、ぽつりぽつりと大学のこと、会社のことを話す。

祖父はただ嬉しそうに頷いて聞いていた。

時々、アドバイスもしてくれた。

涼が決して綺樹の話題を出さないことを、不思議に思ってはいないようだった。

毎日家に帰ってこないことも知っているだろう。

なにもかも祖父は見抜いている。

それは涼を安心させた。

綺樹が旅行にでる理由は、もしかして涼を祖父の元に来させるためかもしれない。

ふと涼はそう思った。