”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


   *

やっぱり変な癖というのだろう。

最初の電話は唐突にかかってきた。

大学に来ていた涼は、教室に足早に向っている途中だった。


「綺樹?」


綺樹が携帯に電話をかけてくるという意外性に、疑問形になる。


「邪魔した?
 たいした用じゃないんだけど。
 ちょっと旅行してくるから。
 それを言おうと思って」

「旅行?
 なんの仕事?」


成介からは、定期的に西園寺夫人としての仕事スケジュールをもらっていた。

旅行を含むものがあっただろうか。

頭に浮かべるが、思い出せない。