”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


フェリックスがゆっくりと顔を向ける。


「じゃあ。
 食べ終わるまでそこから離れるな」


しばらくの沈黙の後、綺樹は再びナイフとフォークを手にした。

数口食べて、カトラリーを手から落とし、口を押さえた。

体をびくつかせる。


「下手な演技はやめるんだな」


フェリックスは自分の皿から目を離さずに冷たく言った。

綺樹は目を閉じた。

じっとりと額に汗が浮かぶ。

胃がバウンドする収縮を繰り返す。

椅子から落ちるようにして床に手をついた。