”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


「それは惚れている何とかです」

「んー。
 でも、おまえも、女たちも、だから離れられないんじゃない?」


目だけ向けて、くすりと笑った。

でも、ここには一人、ただ曲を聞いている女がいる。

繰り返し。

綺樹はグラスをゆっくりと傾けて中身を喉へ流し込んでいた。

味わうのではなくて、ただ体内にアルコールを入れていく作業。

成介は綺樹から視線を外した。


「私は。
 あなたはトランスクリプションの“いずこへ”だと思いますけどね」