「何も無く人生を終えていくのがですか?」 綺樹はびっくりした顔を向けた。 「え?なんだって?」 「なにって、あなたが今、そう言ったでしょう」 「違う。 それじゃなくて、この曲だよ。 演奏が難しくて、ドラマティックで」 成介は口をつぐんだ。 「それは。 ずいぶん美化しましたね」 「そうかな」 苦笑のような照れ笑いのようなものを浮かべ、また横の壁の方を向いてしまった。