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歩き方でも、ダンスでも、言葉遣いでもない。
なによりも綺樹にとって一番辛いしごきは食事だった。
ナイフやフォークの持ち方は別にいい。
ワインをがぶ飲みするのを止められるのもいい。
ただ食事を全部平らげなくてはならないのが辛かった。
元々食べる量は少ない方だ。
その上、スペイン料理の味付けと油が胃に堪える。
限界を感じて、綺樹はナイフとフォークをテーブルに置いた。
今夜は本当にもう無理だ。
「全部食べるんだ」
フェリックスは見向きもせずに言い放った。
「無理」
「おまえのために栄養からカロリーまで計算して出してある。
全部食べなければ意味が無い」
「食べられない」
綺樹は軽く両手をテーブルに打ち付けた。

