綺樹は横着に身を乗り出すと、空いているグラスにワインを注ぎ、成介に差し出した。 一口飲んで、綺樹をちらりと見る。 「この味、わかりました?」 辛辣だ。 「最初は煙草を吸っていなかったんだ」 子どものような弁解に、成介は頬を緩めた。 しばらく無言でワインを味わっていた。 「カンパネルラですか?」 小さな音量でピアノ曲が流れていた。 終わったと思ったら、また繰り返される。