”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


   *

成介はドアをノックした。

療養している祖父を見舞った後、いると聞いた部屋を訪れていた。

返事があったのに開けると、部屋の中は暗い外よりも更に暗かった。

オレンジの小さな光が闇の中、遠くにある点として見える。


「電気、点けますよ」


1階のリビングは、ベランダにイギリス風の木で造られた温室と続いている。

綺樹は温室の壁と一体になっているベンチに、片手に煙草、片手にワイングラスを手にして座っていた。

突然の明るさに、目をしばたいている。

煙草の火を消すと、手を伸ばして頭上にある窓を開けた。


「ドア、開けておいていいよ」


成介は煙草を吸わない。

成介は大丈夫ですよと言ってドアを閉めた。