そして食事会の夜から西園寺の家で暮らすことになった綺樹は、寝室は別だから、と普通に言った。 「公的には夫婦になるって言っただろ。 プライベートは自由にしろよ」 涼はくちびるを結び、綺樹を見据える。 「なるほど、わかった」 背を向けると部屋を出た。 こうして結婚生活は始まった。 “表向きは夫婦”の生活が。 だけど、だけどだ。 涼は薬指に慣れぬ感触で目をやる度に思う。 綺樹と確かな繋がりがある。 やっと名前のつく関係になったのだ。 とりあえず、今はそれでいい。 そう考えた。