食事会には、綺樹はウェディングドレスを着なかった。 何かのパーティーの時に着たという、白いロングドレスで済ませた。 アイボリーの糸で蔦や花が裾一面から胸元へと、立ち上り消えていくように刺繍され、ドレスの正面の一部には斜めに切り裂いたように黒い布地があわせてある。 純白なのに、ほんの一部の黒が、その意味の全てを覆していた。 純潔さ、従順さ、昼間、表、正。 そのドレスを選んだことで、段々と綺樹の考えがわかってきた。 綺樹にとって、これは結婚の契約じゃない。 ビジネスの契約なのだ。