「どれがいい?」 隣に座っている涼に顔を向ける。 「それは普通、男のセリフ。 しかもお前の場合、後ろ向き」 「大体、おまえ、するの? 日本人の男って、あまりつけないだろ。 いる?」 「この期に及んで、そこまで戻るのか!?」 手を出して、テーブルの上に並べられた指輪を指し示した。 「何事も困難にぶつかったら原点に戻るのが基本だろ」 「これのどこが困難だよ」 運んできた店員が、苦虫を潰したような顔をして笑いをこらえている。