なぜその眼差しや仕草で悟れなかったのだろう。 これほど女と遊び、他ならばたやすく見抜き、感じて、落とすのに。 なぜ自分は信じられなかったのだろう。 目が曇って見えなかったものがやっと見えた。 涼の沈黙に綺樹が微笑した。 背を向けて部屋出て行こうとしているのに、涼ははっと我に返った。 「ある。 あるんだ。 西園寺に得るものが」 綺樹は肩越しにこちらを見た。