”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


「ダバリードで副社長を張っていた威圧感は健在だな」


涼が軽く笑いながら言うと、綺樹の何かに触ったようだった。

冷静な雰囲気には戻ったが、目は相当、腹に据えかねていることを物語っていた。


「政略結婚というのは、互いに得るものがあるからするんだ。
 この結婚で西園寺は何の得があるんだ?」


涼の顔が静まったのに、綺樹の目が優しくなった。


「結婚は同情でするもんじゃない。
 さやか辺りから、こっちのことを色々聞いて、承諾させられたんだろ。
 やめとけよ」


まるで年上のように柔らかく諭した。

確かにさやかからこの話がきた時に状況を聞いた。