「最悪だ。 スペインに帰る」 涼は追いかけて綺樹の腕を掴んだ。 「っつ。 あっちこち縫ってんだぞ」 小さく叫んで腕をとりかえした。 「ごめん」 痛みで潤んだ目で涼を睨み上げた。 「おまえっ」 息を吸う。 「何考えてんだっ。 馬鹿か! 結婚はどうしたんだよ」 勢いよく言葉を連続して投げつける。 見据えるように目に力が入り、空気が変わった。 足元に叩き付けられそうになる。