わからないのは、なぜフェリックスが政略結婚を計画したか。

相手を聞いても、知る必要が無い、の一点張りだった。

どっちが当主だと皮肉れば、こういうことは当主補佐の仕事だと言い放った。

子どもは最低2人だとまで言った。

どういうノルマだ。

確かにこういう立場上、結婚はやむ得ないだろう。

だけど、だ。

思い出すとふつふつと怒りが再発してくる。

綺樹は黙ったままシャンパンを飲み、煙草をくわえた。


「ああ、そうだ。
 結婚おめでとう。
 この間、電話で言いそびれた」


綺樹は急に現実に戻り、唐突に言った。