”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


大丈夫だ。

大丈夫。

フェリックスは自分に対して繰り返し言い聞かせていた。

そうしないとこの状況に心が負けそうだった。

そして負けたら終わりだ。

もう一人執刀医がいれば。

もう少し傷が少なく、出血が無かったら。

せめて頭蓋骨の陥没骨折が単純骨折だったら。

頭から考えを追い出す。

目の前を淡々とこなすことに、ただ集中し、かろうじて心拍と血圧が計測できる状況で手術は終わった。