さやかは腹立たしげに、一方的に電話を切った。
この状況を招いたのは自分に一因ある。
だがあの男にも原因があるのだ。
未だに手術室内が慌しい様子に、さやかは気がかりな視線を送った。
手術室内ではフェリックスが頭蓋骨骨折による破片を取り除いていた。
細かい骨の破片が脳に食い込んでいる。
モニターを横目で見ると、血圧が下がり始めていた。
「もう100ミリだ」
看護婦に指示を出すと、手の裂傷を縫合していた医師が顔を上げた。
「出血がひどく、血圧を上げるのは危険です」
手術台の下には血だまりができていた。

