暁子は何も聞かなかった。
ただ心配そうな眼差しで見ている。
「知り合いなんだ」
涼はとってつけたように言った。
「だから驚いた」
それだけ言うと、コップを置いて再びソファーに戻った。
「ごめん。
ええと、ドライブだっけ」
ipad を再び取り上げて、さっきまで見ていた画面を開く。
「ええ」
隣に座って、一瞬目を合わせてから、画面をスクロールさせる。
心配を装い更に聞こうとしない事も、下手に慰められなかったことも、有難かった。
触れ合っている足から感じる温かみに慰められる。
暁子は暖かい。
そして、この横で生きている。

