”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


誰かの悲鳴とスペイン語がまくしたてられているが、その中心の綺樹の反応は全くなかった。

段々と地面に黒い染みが広がっていく。

綺樹の命だ。

砂時計の砂のように、落ちきったら、それで時間切れ。

画面が暗転した。

涼は取り落とすようにipadを置くと、立ち上がった。

キッチンに入り、コップに水を注ぐと一気に飲み干す。

唐突に音声が再び始まり、涼はぎょっとしたように顔を向けた。

自動再生を暁子が止めた。