『水月の帝国』 圧倒的な湿度に喘ぐ水月は 植物だけがこの世界を支配している 翡翠と孔雀石のグラデーション 女王のように神々しい無数の街路樹が 毎秒を駆けて広がりながら この文明とやらを殲滅する幻がよぎる 日々肌を凌すこの不快感の中で この美しい生き物に絡め取られたい 前線を真上に指さし 僕は梅雨の晴れ間に目を細める