たぶん恋、きっと愛





明日はケーキを焼くから。


そう言っていたのは、下手な言い訳ではなかったようで。
雅は朝から、もくもくと粉を振るい、バターを刻んでいた。


鷹野は仕事に行くいつものように。
雅の頭を撫でて、出掛けようとしたけれど。
あまりに夢中な様子の雅に、出した手を引っ込めた。


「早くから頑張ってるねぇ。何が出来んの?」

カウンターに寄りかかって覗き込んだ鷹野に、雅は晴れやかに微笑む。


「ブルーベリーの、レアチーズパイ。……と、パイ生地。冷凍しておこうと思って」


昨日の話など、なかったかのような笑顔に、鷹野も釣られて微笑んだ。


「俺のぶん、取っておいてね」

「うん」


あどけない、と鷹野は感じる。可愛い、とも感じる。

多分、凱司の言うように、拾った子猫に感じるものと同じだとは思うけれど、好きだなぁ、と。

そう思った。


「鷹野さん、今日は何時頃帰りますか?」

思い出したようにあどけなくなる、敬語混じりの会話に、違和感はない。



「雅ちゃん、その“鷹野さん”っての、もう少し何とかならない?」

「…え、た…鷹野、さ……」

ま?


「……………さま…」


思いもよらなかった。
まさかの、“様”付け。


「あっ、えっと……」


あり得ねぇ。
なんだこの小動物。

手を止めて、おろおろと困惑した目で見てくる雅に、思わず笑いが込み上げた。