1本、2本。
立て続けに煙を吐き出す凱司は。
いつまでも黙っている雅に痺れを切らすでもなく、ゆっくりと立ち上がった。
キッチンに立ち、雅の買ってきたアーモンドココアの缶を開けて、カップに注ぐ。
ピッ、と電子レンジを動かす音が、やけに響いた。
ココアを温めているカップは。
先日雅にと、買ってきたもの。
白い陶器に葡萄が浮き彫りになった浅い、もの。
電子レンジが、温め終了、とばかりに、ピーッと音を立てたのを機に、雅は顔を上げた。
ずっと抱き締めたままの鷹野を見上げ、もう一度鷹野の胸に頬を押し当てると、意を決したように。
腕から抜け出した。
「……そ、ですよね。大したこと、ない。絶対…大したことない…はず」
浮かんだ自嘲気味な笑顔に、凱司は思い切り眉を跳ね上げたけれど。
黙って雅の前に、温まったココアを、置いた。

