雅の髪は。
引きちぎられたように、床に散っていた。
マットに刃の突き刺さった、裂け目通りに。
押し込まれたように切れた髪が残っているのが、時折視界に入った。
雅は徐々に湧いてきてしまう現実感を押しやろうと、目を閉じる。
ついてきたのは、自分だ。
逃げる気が起きなかったから。
あまりにも、目が。
似ていたから。
唯一のドアの外に、誰かいた。ついさっき、息吹の名を呼ぶ声が聞こえた。
女が来てるんだから邪魔をするな、今日は店は休みだろう、と。
雅の、開かれた全身を眺めつつ答えた息吹の、その横顔も。
鷹野に、似ていたから。
悲鳴を上げれば良かったんだ。
その時に、もうやめてくれと。
助けてくれと泣き喚けば。
外の人は味方じゃ無いかも知れないけれど、もしかしたら。
こうやって、何もかも無くす事にはならなかったのかも知れない。
知れない、けれど。
これで………いいんだ。

