「…髪がそんなに…大事か。女はわかんねぇ…な」
握られた手首を、特に振りほどく事もせず、息吹はそのままぐしゃりと、指に絡ませた。
…ああ、わかった。
一樹が大事に…してんだろ。
途端に。
雅の目が、自分を真っ直ぐに見、次いで揺れたのを、息吹は見逃さなかった。
消え入るように力を無くした雅が、小さく息をついて、諦めたように息吹の腕から、手を離す。
「…つまんねぇ、女」
息吹は唇を歪めて、嗤う。
普通は、刃物に怖がって然るべき。
一瞬見せた抵抗は、髪。
唇でも、素肌でもなく、髪だ。
再び黙り込んで、目を逸らした雅の髪に。
息を止めて、僅かに嗚咽のような息を洩らした雅が、微かに震わせる唇に。
くすくすと鷹野に似た笑みを浮かべるそれを深く重ねて。
刃を。
髪に、突き立てた。

