「あんた…頭は大丈夫か?」
「…………」
雅は、手を引かれるままに歩き、一度も口を開こうとはしなかった。
連れ歩いた息吹も、雅のあまりの無抵抗さに、ついに苦笑を浮かべる。
「何にも…わかんねぇ訳じゃぁ…ねぇだろうに」
格子のついた、小さな窓。
最低限の、家具。
息吹の髪の色は、黒。
だが、鷹野のそれと違い、艶はなかった。
座らされたベッドは低く、部屋の中で唯一、柔らかそうな場所。
「俺は楽で…いいけどな」
馬鹿にしたような視線で、雅を見下ろし、息吹の目が笑う。
「あんた…名前なんだっけ?どうせなら、一樹が呼ぶように…呼んでやるよ」
ぎゅ、と雅の手が固く震え、目が、揺れた。

