雅が息吹の手を取り、連れ去られるように公園から消えたことなど、まだ誰も知らない。
凱司は、車の助手席に友典を乗せていた。
“一樹さんと2人にさせてはいけない”と声を上げ、且つ、今現在、鷹野とは一緒にいないと知った宇田川は、すでに雅を捜しに飛び出した後だった。
聞け宇田川。
俺は、確かにアレを好きだ。
そう淡々と。
手放したくないのも、本心だ。ヤっちまったのも、本気だった。
だけど。
だけどな?
お前はよく知ってるはずだ。
うちがどんな家だかを。
お前の背にいる緋鯉は、飾りか?
綺麗なだけの、ただの絵か?
「友典、雅はどこに行った」
「………申し訳ありません」
「話も出来ないほど遠ざかれなんざ、言った覚えはねぇが」
「…………」
「……お前は、普通に生きろ。父親のあとを付いて来ようとするな」
こんな事で、指の一本も平気で取られる世界だ。
付いた人間から目を離し、行方が判らないなどと。
「…申し訳……ありません」
お前の息子でさえ、来るべきではない、と思うのに。
愛しただけで、引きずり込んでいいとは、思えないんだ。
よく聞け宇田川。
俺は…雅を、俺の「女」だ、とは言えねぇんだよ。

