殺されてしまうかもしれない、と。
宇田川の必死な叫びに、凱司は何を思うのか、表情を変えなかった。
メール着信音を上げた携帯を、ゆっくりとチェックする。
その悠長な動きに、苛立ったように宇田川もまた、友典へと電話をかけた。
「…あぁ…マズいな」
送信者は、『鷹野』。
遅くなる、とだけの、メール。
やはり、雅を連れてはいないのだろう。
「宇田川、友典を呼べ」
雅は、単に「行方不明」だ。
鷹野の冷たい激情に当てられて、安定を欠いた精神状態のまま、電話にも出ない。
あれだけ、食事を作ることに手を抜かなかった雅が、ただ遊び歩くとも思えない。
…もしかしたら、と。
2人になれれば。
自分の居ないところで、話が出来れば。
あるいは。
大きく揺れたように見える雅も、理由も訊かずに衝動的に拒絶した鷹野も。
手を取れるんじゃないかと。
鷹野の軟禁が終わる頃に、手をつないで、2人で出て行けるんじゃないかと。
そうなれば。
手放してやるしか、ない。
と……思っていたのに。

