「鷹野、触るな」


雅の肌に置いたままの手が、ぴくりと、動いた。



「………が、い…」



リビングのドアを塞ぐように立つ凱司の表情は固く、ちらりと雅のむき出しの肩を見ると、一歩踏み出した。




「…俺のだ」



吐き出すように、だがハッキリと言い放ったセリフは、今まで何度となく聞いた、言葉。


渦巻くように行き場を失っていた鷹野の怒りは、真っ直ぐに、凱司に向いた。



射殺せそうな。
呪い殺せそうな。

振り向いた鷹野の、そんな視線に、凱司は動じない。


かつての、出会った頃のような目に似てはいるが、まるで別物だ、と思う。



弱味を掴まれている、負け犬。


噛みつきたくてたまらない時にも、耐えざるを得ない。


そんな鬱屈とした思いは、雅の存在で、まろやかにおさまっていたのだけれど。



再び掻き熾したのもまた、雅。