でもおかしいよね、と鷹野は雅を覗き込みながら呟いた。


「この子、多分、男キライだし少し怖がるよな? なのにやたら無防備に見えるのは何故?」


今だってキスくらいなら出来ちゃうし?と顔を近付けてみるけれど。
雅はすっかり眠ったまま。


「すんな」

「…しないよ」

「すんなっての」


尚も雅の唇に近付く鷹野の頭を押しやり、凱司はしかめっ面で雅を睨み付けた。


「まあ、しばらくはママゴトでいいけど」


ぎゅ、と髪を1つに束ねて、再び立ち上がった鷹野が笑んだけれど。

凱司は黙ったまま、雅を見つめていた。



「…実家…連れて、行くかな」

「駄目。凱司の嫁に決定したらどうすんだ」

「…だよなあ」


ああ面倒くせぇ、と頭を抱えて溜め息をひとつ吐くと。

立ち上がった凱司は、氷の溶けかけたコーヒーを、一息に飲み干した。


雅はもぞもぞと。
学校指定のジャージなのか体操着なのか、紺色のハーフパンツから伸びる素足を抱えるように。
小さく丸まった。