「宇田川さん…あたし、友典さんと話せないの、寂しいです」

昨日は、あたしが失礼な事したんです。
学校一緒で「お兄ちゃん」なのに少しも話せないの、寂しい。



雅は、頑なに首を横に振る宇田川を見つめ、突然その頬を両手で挟み込んだ。


「横に、振らないでください。宇田川さん、あたし、友典さんと話せないの寂しいです」


「みっ…雅さん」

「寂しいです」



繰り返す雅は、宇田川の頬を挟み込んだまま、ぐぐっと屈ませる。


何をするのかと、怪訝に見ている凱司と鷹野の前で。

自分の視線の高さまで宇田川を屈ませた雅は、じっとその目を見つめ、ふわりと微笑んだ。



「あたしの事なんかで、凱司さんは友典さんを酷い目に合わせたりしませんよ?」


だから。

わざと友典さんに冷たくしなくて大丈夫です。



それは、ごく小さな声だった。

にも関わらず、聞こえてしまった凱司と鷹野は、ちらりと視線を交わすと、ほぼ同時に。

笑いを噛み殺すために下を、向いた。