「……して、みる?」
思いのほか真剣な声になってしまったと、鷹野は自嘲した。
想定外ではない。
空気に呑まれるようならば。
惑うようならば。
と。
期待、しなかった訳じゃない。
ただ、敢えて逸らした流れを、わざわざ雅が引き戻すとは、思わなかっただけ。
膝に額を当てたまま、ただ、ぎゅっと鷹野の片足に抱き付いた雅は、体を固くして。
首を横には、振らなかった。
…本当に?
後悔、するんじゃないか?
自棄、だろう?
そんな事を訊きかけて、鷹野は口をつぐんだ。
息の止まるような緊張に動きを止めた雅の、濡れた髪に指を通す。
それだけで、びくりと肩を震わせた雅の吐息が、余裕のつもりでいた鷹野の理性を、シャボン玉のようにあっけなく。
跡形もなく弾けさせたような気が、した。

