「…………ごめんなさい…」
ああ、ようやく喋った、と鷹野は。
雅を掴まえていた腕を緩めた。
ざぱり、と立ち上がり、うわジーンズ重たすぎ、と笑いながら雅の横を通り過ぎる。
シャンプーのボトルから、手のひらに。
とろりとしたパールグレイの液体を受け、湯に浮くストローを拾った。
浴槽のふちに腰掛けて、にこやかにストローを差し出す鷹野に、雅の目が、戸惑いつつも揺らいだ。
「シャンプーでも、出来るんじゃない?シャボン玉」
裸の鷹野の。
鎖骨から右腕に、細い蛇の刺青。
正面からでは見えないけれど、腰に、蝶。
そして、この前の、傷痕。
雅は、濡れた髪の張り付く鷹野の上半身を眺め、一瞬泣き出しそうに顔を歪めると。
差し出されたストローに、ゆっくりと手を伸ばし、かすかに、笑った。

