凱司なら、それでも耐えるだろうか。
こんな、決死の思いです、と全身で叫ぶ雅を、取っておけるだろうか。
皿に乗せたケーキのように。
ラップをかけて、しまって置けるのだろうか?
抱き上げた体は冷たくて。
そのまま、白く濁った浴槽に、体を沈めた。
履いたままのジーンズが、重たく足に貼り付く。
湯の中でゆっくり、抱えた体の向きを、変えた。
目を見ようとしない雅が怖がらないように、後ろ向きに。
「…雅、ちゃん?」
ガチガチに緊張しているのが、いじらしいを通り越して、なんだか可哀想になってくる。
うちに来る前は、こうだったんだろうか。
さっきみたいに、テキパキと。
決まりきった事をするように、あっさりと服を脱いでいたのかも知れない。
あの、硬い表情で。
「…ストローだけじゃ、シャボン玉…出来ないよ?」
洗剤どうすんの、とくすくす笑えば、後ろを向いたままの雅の肩が、ぴくりと動いた。

