「…友典」
数秒、ただ睨むように視線を留めただけの鷹野だったが、突如、その胸倉を掴み上げた。
「…母親に喋らせて、当の自分はだんまりか」
俺に謝ることはない。
だけど自分で、何故雅に会いたいかくらい、言ったらどうだ。
「…………っ」
挑むような友典の目つきは、今までにも増して、鷹野を嫌いだと、叫んでいた。
腫れた唇の傷が生々しく出血の痕を残しているが、友典は悔しげに、唇を噛む。
それでも、鷹野の手を振り払う事はせずに、母親である由紀も、どこか諦めたように、目を伏せた。
「…雅さんに、謝らせ、て、ください」
嫋やかで艶やかで。
造形の何もかもが、友典よりも細く、繊細。
だが、じわり、と這うようにも、立ち昇るようにも見えた、鷹野の怒りは、時に。
凱司をも、しのぐ。
友典の緊張の糸は、ますます張り詰め、その声を震わせた。

