「…お風呂…お湯溢れちゃう」
「まだ、大丈夫だよ」
もぞ、と身じろいだ雅が、鷹野の腕の中で、浅く、緊張したような息をついた。
少しキツいかと、力を緩めた鷹野は、もぞもぞと体勢を変える雅の腕が、自分の背に恐る恐る回されたことに、動揺した。
「…お風呂は……駄目、です」
きゅ、と控え目に。
背中でシャツを掴む。
自ら胸に耳を当て、心音を聴いているのか黙り込むと、雅は落ち着きを取り戻したように、ゆっくり鷹野を見上げた。
「………鷹野さんは…慣れてるかも知れないけど…あたし、恥ずかしい」
好きだけど、恥ずかしい。
凱司さんに…そうしろ、って言われたって………出来ない。
見上げたまま目を逸らした雅に、鷹野の中で何かが切なく、締め上げられた。

