後ろから、顎と頬とを包むように、顔を上げさせた。
指は、通常触れる事のないような奥歯をなぞり、舌との隙間を柔らかく、えぐる。
「雅、ちゃん」
今、名を呼ぶのは可哀想だとは思いつつも、あまりにも抵抗しない雅の、上向かせた苦しそうな顔を逆さまに見つめ、小さく声をかけた。
「……っふ‥ぁ‥」
名を呼ばれて始めて。
ぴくり、と僅かに身じろいで、自分が何をされているのかをようやく認識したのか、雅は。
鷹野の指を押し出そうと、舌を強ばらせる。
「…っ…ぁ」
「雅、ちゃん」
鷹野の手首を両手で掴み、弱々しく引き抜こうとする力と、押し戻そうとする舌の動きが、鷹野に僅かな罪悪感と、快感とを同時にもたらした。
「雅ちゃん…みや、び」
息苦しさに耐えられなくなったのか、口内が逆に動く。
鷹野の指を包むように、奥に引き込もうと、意志とは別に動き出す。
喉が鳴り、飲み込めない異物がよほど苦しいのか、二度三度と生理的に嚥下を繰り返すと、けほりと小さく咽せ、雅は、とうに滲んでいた涙を、こぼした。

