「……お風呂、ですか?」
「うん」
玄関の鍵も、かけた。
どうしたって意識するだろう凱司の不在に、あんまり気を取られて欲しくない。
「それは……ちょっと…というか…だいぶ恥ずかしいです」
逸らされた視線と、曖昧な笑顔。
単に冗談のように流そうとしているにしては、ぎこちない動きで、雅は紅茶の葉が入った缶を取り上げた。
そして、鷹野がそのままバスルームに行くのを、止めはしなかった。
雅は。
本当に給湯の始まった浴槽の水音と、背後から抱きしめるように、耳元に唇を寄せた鷹野とに、急に固く息を呑み、緊張した面持ちで、俯いた。
「…本気で、誘ってるけど?」
耳朶をくすぐるように、低く甘く囁けば。
動揺したのか、雅は手にした紅茶の缶を、その場に取り落とすように、置いた。

