言い淀む友典を見つめていた坂崎だが、その大振りな顔を困ったようにくしゃりと笑顔に変えると、再び友典の傷になった唇に、太い指を乗せた。
「章介さんに黙ってここに来るなんて、よっぽど大事な事があるのね?」
坂崎には、逆らって指を払いのけてはいけない気がして、友典は眉間にしわを寄せたまま、視線で頷いた。
「その気概は素晴らしいんだけど…」
私は章介さんには逆らえないわ、だって彼、すごく怖いのよ?
と、身震いの仕草をしながら頬を赤く染めた坂崎に、友典は今度こそあからさまに、引いた。
この頑強そうな肉体と顔つきをした坂崎は、もしかしたら父の章介に、懸想しているのか?
恋、などという淡い単語ではなく、とっさに出た懸想、という言葉がやけにしっくり来て。
友典は思わず父を、心の底から同情し、尊敬した。

