たぶん恋、きっと愛



「開店までは駄目よ」

「逃げや…しねぇよ」

「でも駄目」


また章介さんに殴られちゃう。

息吹ちゃんが一回抜け出しちゃった時、怖かったんだからっ。


やっと治って来たのに、と頬を押さえ、腹部をそっと押さえたその筋肉質な腕は、友典を再びひょいと、引き寄せた。


「で、息子さん…友典さんだったかしら?何か、章介さんのお使い?」


すっかり生気を抜かれたように茫然と。

息吹が立ち上がって何事も無かったかのように背を向けるのを見つめていた友典は、我に返ったのか、唇を乱暴に拭った。



「……って…!!」


噛み切られた下唇の端が、思い出したように脈打つ。

止まっていなかった血は、手の甲に鮮やかに、赤い。



「一樹の職場…を、俺に訊きに来た、…だけだよな?」

だから、俺の客だろう?


にっ、と唇の端を上げて笑う顔が、ぞっとするほど鷹野一樹に似ていて。


友典は深く、息を吸い込んだ。