「………黙れ」
ふるふると拳を震わせる友典を、今度は憐れむように見つめる。
「俺、あんたみたいな…青臭い馬鹿、…嫌いじゃあ…ねぇよ?」
ペロリと唇を舐め、首をわずかに傾けて、どこか愉しそうに。
「…一樹の……大事なもんって、あの…乳臭ぇ…女?」
一瞬で、凍りついた。
息吹が言っているのは、雅の事だろう。
何故、息吹が?
なんの関わりで、この男はここに閉じ込められるようにして、生きているのか。
まさか、雅に何かしたからなのか?
凱司自らが、関わっている。
この事実は、組織的な問題ではなく、単に私的な事だったからなのか?
雅に関わる、問題だったのか?
不安な思いは、隠す間もなく、友典の表情に表れた。
息吹は、さも可笑しそうに。
血の気の引いた友典の顎を、その頬に指が食い込むくらいに掴み上げ、無理に上を向かせる。
「…いいねあんた。素直な馬鹿は…貴重だぜ?…女なら…なぁ」
唇は、確実に。
息吹の言葉が終わる前に。
友典が我に返る前に。
なんの脈絡もなく、重なった。

